住宅性能表示制度とは平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」に基づく制度です。
■その目的は
3つからなりますが、住宅の性能をわかりやすくしようとしているものです。
- 住宅の性能(構造耐力、省エネルギー性、遮音性等)に関する表示の適正化を図るための共通ルール(表示の方法、評価の方法の基準)を設け、消費者による住宅の性能の相互比較を可能にする。
- 住宅の性能に関する評価を客観的に行う第三者機関を整備し、評価結果の信頼性を確保する。
- 住宅性能評価書に表示された住宅の性能は、契約内容とされることを原則とすることにより、表示された性能を実現する。
■10個のモノサシ
1.地震などに対する強さ(構造の安定)
耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)というものがあり、地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさを表示します(等級3~1)。
極めて希に(数百年に一度程度)発生する地震力が建築基準法で定められており、性能表示制度ではこれに耐えられるものを等級1としています。想定する地震の揺れの強さは、地域により異なりますが、この揺れは、東京を想定した場合、震度6強から7程度に相当し、関東大震災時の東京、阪神淡路大震災時の神戸で観測された地震の揺れに相当します。
等級は1から3まであり、等級2は等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して倒壊や崩壊等しない程度を示しており、等級3では1.5倍の力に耐えることができます。
- そのほか
- ・耐風等級
- ・耐積雪等級
- ・地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法
- ・基礎の構造方法及び形式等
- などがあります。
2.火災に対する安全性
- 耐火等級
- 火災が起きた時に、壁などがどのくらいの時間、火炎にあっても燃えないかを示しています。
等級は、住宅の構造などにより分けられていますが、新築一戸建ての場合、最大等級は60分耐えるとなっています。
- 感知警報装置設置等級
- 住戸内で発生した火災の早期の知覚のしやすさを表示します(等級4~1)。
等級は、感知器と警報装置の設置状況を示しています。等級1は、消防法で定めるレベルです。
3.柱や土台の耐久性
木材は、腐朽菌によって腐ったり、シロアリに食べられたりして劣化して、住めなくなったりすることがあります。それに対する対策がどの程度行われているかを示しています。
- 劣化対策等級(構造躯体等)
- 等級は1から3まであり、建物がどの程度の期間持つような対策をしてあるかを示しています。
等級3では、通常想定される自然条件及び維持管理で3世代(90年くらい)までもつような対策が講じられていることを示しています。
等級2の場合は2世代・60年程度です。
等級1は、建築基準法の規定を満たしていることを意味します。
4.配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)
住宅を長く持たせるためには、建物の性能以外に水道などの配管の水漏れなどへの対策も必要です。
- 維持管理対策等級(専用配管)
- 給排水管、給湯管及びガス管などの維持管理(清掃、点検及び補修)を容易とするため必要な対策がされているか表します(等級3~1)。
等級は、特に配慮した措置(等級3)と基本的な措置(等級2)、その他(等級1)の違いを示しています。配管が点検口などで簡単に修繕できるようになっているかが差となっています。
5.省エネルギー対策(温熱環境)
住宅の構造躯体の断熱措置などに十分な工夫を講じていて、少ないエネルギーで暖冷房を行うことができるようになっているかです。
- 温熱環境(省エネルギー対策等級)
- 暖房器具に使用するエネルギーの削減のための断熱化等による対策の程度を表示します(等級4~1)。
等級4:平成11年に制定された基準(通称「11年基準」)に適合する程度のエネルギー削減が得られる対策を講じた住宅
等級3:平成4年に制定された基準(通称「4年基準」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅
等級2:昭和55年に制定された基準(通称「55年基準」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅
等級1:その他
6.シックハウス対策・換気(空気環境)
シックハウスにならないようにされているかを表しています。
- ホルムアルデヒド対策(内装及び天井裏等)
- 等級3:ホルムアルデヒドの発散量が極めて少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆☆等級相当以上)
等級2:ホルムアルデヒドの発散量が少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆等級相当以上)
等級1:その他(天井裏等にあっては「−」と表示されます。)
- 換気対策
- 室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための必要な換気対策です。2つあります。
- 居室の換気対策
- 換気扇などの有無と全館空調や居室空調などの方法があります。
- 局所換気対策
- 換気上重要な便所、浴室及び台所について、換気扇・窓があるかを表示します。
- 室内空気の化学物質の濃度等:選択表示事項、建設住宅性能評価のみ
- 評価対象住宅の空気中の化学物質の濃度及び測定方法を表示します。
ここで対象とする化学物質は、健康への影響の可能性のある化学物質のうち「特定測定物質」として選定した、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンです。
7.窓の面積(光・視環境)
窓などの開口部の面積と位置についてどの程度の配慮がなされているかを評価します。
- 単純開口率
- 窓など開口部の面積の床面積に対する割合を「%以上」で表示します。
- 方位別開口比
- 開口部の面積の各方位別ごとの比率を「%以上」で表示します。
8.遮音対策(音環境)
住宅では、同一建物内の隣戸の話し声や上階の足音が伝わってくることで、非常に不快に感じることがあります。特に、子供の飛び跳ね音や走りまわり音がクレームの原因となるケースが多くなっています。
ですので、これは主にマンションなどで重要で新築一戸建てはあまり関係ありません。
9.高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)
- 高齢者等配慮対策等級
- 住戸内における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度を表示します(等級5~1)。
等級は、「移動時の安全性に配慮した処置」の程度と「介助の容易性に配慮した処置」の程度を組み合わせて判断されます。
移動時の安全性に関しては、以下のものを採り上げています。
- a. 垂直移動の負担を減らすための対策
- 例)高齢者等が利用する部屋と主要な部屋とを同一階に配置する。階段について、手すりを設けたり、勾配を緩やかにしたり、事故が起きにくい形にする。
- b. 水平移動の負担を軽減するための対策
- 例)段差を解消したり、少なくしたりする。段差のある場所に手すりを設ける。
- c. 脱衣、入浴などの姿勢変化の負担を軽減するための対策
- 例)玄関、便所、浴室、脱衣室に手すりを設ける。
- d. 転落事故を軽減するための対策
- 例)バルコニーや2階の窓などに手すりを設ける。
各等級は、上記のaからdまでの対策を組み合わせて、その手厚さの程度で評価しています。
介助を容易にするための対策としては、次のものがあり、等級3以上で求められています。より上位の等級になるにつれて、幅やスペースをより広くすることが求められるなど、余裕が増します。
- a. 介助式車いすでの通行を容易にするための対策
- 例)通路や出入り口の幅を広くする。廊下の段差を解消する。等級5では、通路は850mm以上、出入り口の幅は800mm以上必要で、等級4では通路780mm、出入り口750mm以上が必要です。
- b. 浴室、寝室、便所での介助を容易にするための対策
- 例)浴室、寝室、便所のスペースを広くする。等級5・4では浴室の短辺が内法で1,400mm以上必要で、等級3では1,300mm以上が必要です。
10.防犯対策
- 開口部の侵入防止対策
- 住宅の開口部を外部からの侵入のしやすさに対して、その上で防犯建物部品を使用しているか否かを階ごとに表示します。
開口部の種類 |
例 |
侵入防止性能が求められる部分 |
開閉機構を有する開口部のうち、住戸の出入口として使用される開口部 |
玄関ドア、勝手口 |
戸(侵入可能な規模の大きさのガラスがある場合は、そのガラス部分についても)、錠 |
開閉機構を有する開口部のうち、住戸の出入口として使用されない開口部 |
引き違い窓 |
サッシ枠(2以上のクレセント等が装着されているものに限る。)、ガラス |