投稿日:2014年1月18日
内閣府が2012年度の国民経済計算を発表しました。「国富」は前年度より1兆円増えて3000兆円復活となりました。株式市場の回復により株式が77兆円増えるなど金融資産の増加が顕著でした。そのため民間部門が30兆円増やしましたが、日本政府は21兆円減らしました。アベノミクスにおける円安・株式市場回復は日本の富を増やしましたが、経済活性化を狙った政府支出はその効果よりも政府部門の債務超過という悪い結果となっています。
国富3000兆円は、総資産8685兆円と負債5684兆円からなっていて、残高が3000兆円となっています。その総資産の中をみると多いのが、「現金・預金」1413兆円、「土地」1143兆円、「住宅・建物・構築物」1266兆円の3つが多くなっています。これらのうちで家計部門では「現金・預金」が853兆円、「土地」686兆円、「住宅・建物など固定資産」339兆円を保有していて、家計部門の富の充実が日本を支えているといえます。
そのため、政府部門が資産1092兆円に対して、負債が1131兆円となり正味資産としては▼38兆円の債務超過となっていても家計部門が豊かなので「日本破産」とはなりません。ただ、財政再建は急務であるといえます。
2012年度の富の増加は円安による株式市場の増加が多かったのですが、これが再び円高に転じるとこれらがマイナスになってしまいます。そして、富を支える「土地」は前年度より▼14兆円減っていて、「住宅・建物・構築物」も▼18兆円減っていますので、金融資産がマイナスになると日本の富はマイナスとなってしまいます。
少子高齢化を遠因とする「土地」「建物」「現金」のマイナスが年に45兆円近くありますので、金融資産の増減がゼロとすると日本の富3000兆円は70年でゼロとなります。それがもし円高になり株式市場が下落するダブルパンチになると年に金融資産が50兆円近くマイナスとなり、合計で年に100兆円の富がなくなります。こうなると日本の富3000兆円は30年でゼロとなってしまいます。
このように日本は人口構造的に富のマイナス要因を抱えていますので、政府の債務超過を早期に再建しないと、円高・株式市場下落・資産価値下落のトリプルパンチによっては日本の富がゼロに近づく日が早まってしまいます。