投稿日:2014年1月17日
国土交通省が「スマートウェルネス住宅・シティ」の実現のために来年度予算で340億円をあてる見込みとなったようです。
この「スマートウェルネス住宅・シティ」は、「高齢者や子育て世代など多様な世代が交流し、安心・健康・省エネでバリアフリーに配慮も配慮した住宅・まちづくり」です。
その実現のために民間の先導的な事業モデルの公募をして補助金を340億円出すということです。
高齢者・障害者及び子育て世帯の居住の安定確保や、健康の維持・増進に資する先導的な事業であると選定された事業にて対して、建設費の一部を補助するというものです。これは「サービス付き高齢者向け住宅推進事業」への補助金も含まれます。さらに、既存の住宅団地における高齢者向け施設などの整備費の一部を助成する「スマートウェルネス拠点整備事業」も含まれます。
そしてそれらの事業を選定する「有識者会議」を立ち上げるようです。
この「高齢者や障害者と子育て世代が共に暮らすサスティナブルな街づくり」は大変良い考え方だと思うし、現代の日本の住宅において最も必要な考え方だと思います。
ただ、今回の「スマートウェルネス住宅・シティ」の概念図をみると、一部のUR団地で行うものとしか見えません。
逆に言うとゴーストタウン化しつつあるUR団地の救済に国の税金を使うように見えます。
それでも「サービス付き高齢者向け住宅」が新たに作れられるのは大変良いことです。そして、それが年金生活者でも楽々に払える家賃であれば、なお良いといえます。
ただ問題なのは、長年住み慣れた家を離れて賃貸住宅に住むのは勇気がいることです。
まず友人・知人関係が疎遠になるのが怖いのと、現在住居を売っても二束三文にしかならない場合は、なんらかの出費によって年金だけで生活できなくなった時に家賃を払えなくなったらど、住むところが無くなってしまうのかという不安があります。
そのため郊外の駅から遠い一戸建てに住み続けることを消極的に選択せざるをえない人が多いことです。団塊世代800万人の半分近くは該当するといえます。
そこの金銭的な問題を解決しないと、この「スマートウェルネス住宅・シティ」は一部の人のためのものにしかならないのです。
2025年の住宅ストックと必要世帯数の推計で、
2025年には住宅ストック数は6780万戸になり全国の世帯数5230万を大きく上回ります。
ただ、耐震性などに問題がある古家や空き家などが740万戸となり、何とか住んでいますが、耐震性やバリアフリーに問題があり売買するにはリノベが必要になるみのが3860万戸となり、そのまま使えるものが2180万戸にすぎません。
そして世帯数としては高齢者単身世帯が大きく増えるために、貸家世帯数が2000万世帯となり、不足が1150万戸となります。また、サ高住もふくめてマンションの必要世帯数も1200万世帯となり、不足が590万世帯となります。
この2025年問題(団塊世代の後期高齢者入りで社会保障費が莫大な金額になり国家財政が破たんすること)の解決のための一つの手段としては良いことですが、査定額が二束三文の郊外一戸建ての後期高齢者1000万世帯をどうするかが本題であり、これを解決する手段を講じることを2025年までの早い時期に行わなければなりません。
優先順位としてはむしろこちらが先でしょう。
有識者会議がこれを考えてくれれば良いのですが、まず難しいでしょう。
高齢者介護の専門家であったり建築の専門家であっても、複合的な問題である2025年問題の解決の専門家ではないからです。
私の案は、
団塊世代などの1000万世帯が郊外一戸建てに住み続けて「要介護」にならずに75歳を迎えるようにするために、
①全員が元気なうちに介護の知識をつけて介護の実務をボランティアで経験する。URの「サ高住」で介護を経験を義務づけてURサ高住のサービススタッフ要員確保を兼ねる。それにより将来、サ高住のサービスを受けられる権利を得る。
②小学校の空き教室を使って「健康学校」を作り、全員が「健康教室」をうけることを義務づける。これにより前期高齢者は、週のほとんどを介護ボランティアをするか健康教室に行くことになる。
③それでも要介護4以上になったら、自宅を売り払い「サ高住」に入居する。
④その受け皿として、URの古い団地を全て「サ高住」に切り替える。
などが一つの案です。
このほかも地域のそれぞれの事情に合わせた「スマートウェルネス住宅・シティ」を有識者が考えて、地域と話し合って実現するのが良いと思います。
民間の事業者の応募の選定もいいですが、全国で「スマートウェルネス住宅・シティ」を2025年までに実現する具体的案を立てて、実行していく有識者会議を作るべきでしょう。
ただ民間の事業プランを批評するだけの有識者会議ではダメでしょう。