投稿日:2012年11月28日
新築一戸建ての購入の際には、住宅ローンを組む場合が多いです。そして、中古住宅として売ることも多いです。ということは新築一戸建ては「金融商品」という側面を持っているということです。
金融商品であれば、そのリスクとリターンをしっかりと把握する必要があるのですが、ほとんどの人の場合はそこまで深く考えていません。
まず、そのリスクですが
①建物価格は減価償却によって評価されて、15年でゼロに
中古住宅として売る時に、買う側が住宅ローンを使うことが多いですが、その住宅ローンの物件査定において、銀行は建物を減価償却で査定する場合が多いです。木造であれば15年でゼロ査定となってしまうのです。
つまり、買った瞬間から建物は毎年1/15づつ価格が下がるということです。
②土地の査定は路線価を使う場合が多い
土地の査定においては、「路線価」を使う場合が多いです。これは相続の時の参考価格なのですが、土地四価においては一番使われるといっていいでしょう。その路線価の70%から100%の間で土地の査定がされます。
③実際の売買価格は需要の多さ・人気度合により変わる相場商品で債務超過は多い
但し、実際の売買価格は銀行査定とは関係なく、人気がある土地であれば高くなります。また、買いたい人が多いところも高くなります。
逆に、人気の無いところは買い手がいないために安くなります。また供給の多いところとか新築の供給が安くて多いところなども安くなります。
また、その時の金利であるとか税制控除とかエコポイントなどの金融政策などにも左右されます。
そのために、中古住宅は変動要素の多い相場商品であると言えます。
最近の事例で、一番高かったのが田園調布・尾山台でした。もともと人気がある上に中古での販売数が少なく、新築も少ないために希少価値がついたために高くなりました。25年前に6800万円で販売されたものが5800万円で売買されたものがあり下落率はなんとたった15%です。
逆に一番安くなったのが、東武東上線のある駅でした。バブル期や高度成長期には郊外へ郊外へという流れがあり、「チバリーヒルズ」のように郊外に特殊な高額物件の街が形成されていったのですが、現状は「都心回帰」のために安くなってしまつています。そのために20年前に4000万円超える価格であったのが、ここ1年の中古売買事例は900万円となっています。下落率78%となっています。
こうなると住宅ローン残高より、資産価値が大きく目減りしてしまい「債務超過」状態といえます。
この「債務超過」がどの程度起きるか調査中ですが、首都圏の各行政単位でいうと概ね6割を超えるエリアでおきていると思われます。
④住宅ローンの滞納リスクは最低でも5%はある
住宅ローンの滞納は、ほとんどが収入減もしくは収入が無くなったことによります。会社の業績が悪くなり残業が無くなったり賞与が無くなったりするのはまだいいのですが、リストラとかひどい場合は会社が無くなってしまう場合に住宅ローンの滞納がおきてしまいます。
それが起きる確立というのはわからないですが、「企業30年説」というものがあり、30年前の優良企業と現在の優良企業ではかなり入れ替わってしまっていることを考えると、トヨタのような日本を代表する優良企業でない普通の中小企業において、住宅ローンの支払い期間35年間に現在と同じもしくはそれ以上の給与である確率はあまり高くないとも思えます。
現在の失業率を5%とすると、最低でも5%のリスクはあると考えるべきでしょう。任意売却も含めた住宅ローンの破たん率は銀行により大きく違いますが、最少は0.2%ぐらいで、最悪は10%に近付いてると言われています。つまり、住宅ローン滞納リスクは5%から10%の範囲で存在していると考えるべきです。
⑤賃貸として貸すと利率が悪い
郊外で駅徒歩20分を賃貸として貸すと100㎡であっても取れても15万円くらいです。もともと4000万円の商品とすれば年間180万円ですから利率は4.5%と悪くなります。さらに空室リスクや設備更新コストリスクなどがありますので、賃貸として貸して住宅ローンの穴埋めをするというのは、簡単ではないです。
■つまりリスクは
これらを合計してリスクを考えると
①価格下落による債務超過リスクは60%
②支払滞納リスクは5%~10%
となり、
金融商品として「債務超過」となるリスクは65%から70%と計算されます。これほどリスクの高い商品であると言えます。
ただし、意図的にこのリスクを考えて新築一戸建てを探せば、ほとんどゼロになるといえるでしよう。また収入における住宅ローン支払比率が低ければ「債務超過」であつたも問題はありませんし、普通に住宅ローンを払い続けて、住み続けるならば全く意味のなさない計算となります。
最後に、新築一戸建ての多くは「金融商品」の性格は薄く、「家族で楽しく暮らす」ものであることが大きいです。そのためのコストと考えれば、収入内の3割程度は問題無いと思います。