投稿日:2016年6月7日
住宅投資とリターンにおいて、その計算期間が長期に渡るために、計算の前提条件となる「土地相場・貨幣価値・為替相場」や「インフレ率」や「金利相場」が信頼性のある数字となりえません。
今から20年前の1996年の公示地価の全国平均は86万円でした。それが現在(2015年公示地価)は50万円に下がっています。とすると公示地価だけとらえるとリターン率は年▼3%となります。そして1996年の住宅ローンの変動金利は2%で、インフレ率は0.1%でした。
つまり1996年に金利2%で住宅投資をした人はその時に2%以上のリターンを期待したのですが、結果として▼3%となり、2%の金利+▼3%=▼5%の損をしたと言えます。3000万円の投資であれば、3000万円×▼5%×20年=▼3000万円で投資額が全損したことになります。
20年後の2036年の予想インフレ率は▼1%で、金利相場は4%で、予想公示地価は30万円とすると、2016年に変動金利1%で3000万円投資した時の2036年のリターンは▼3%+金利4%=▼7%となり20年で▼140%になるので▼4200万円となります。
つまり一般的な住宅投資は金融的には損するだけと言えます。
また最も重要なことは、住宅投資の価格形成は「材料費+施工費+住宅企業利益」になります。ただ売却時には「土地路線価+建物使用性価値」と価格形成尺度が変わってしまうのです。これは単純に言うと企業利益分は確実に損となるということです。
しかし一般の居住用の住宅投資というのは、家賃比較というものがあるために、その支出額の大小ということもあります。
それよりも居住用の住宅投資というのは「家族・子供の成長のステージとして」ということがあるので、ある意味では教育投資とも言えます。それであれば単純な金融的リターンで損してもいいということがあります。
また最近多い、相続対策としての賃貸住宅投資の場合は、相続税の減額が目的なので、そこで投資額の多くの額がリターンとして受け取ることができるのです。しかし、住宅投資金融計算では大きな損が出ます。そこは計算に入れていないはずです。
例えば、1951年以降の住宅着工戸数は約7100万戸で1500兆円以上の投資をしてきました。それが国民経済計算での土地・建物の総額は1120兆円しかないのです。リターン率は▼25%です。
これでは金融的住宅投資は早晩行き詰まり、ライフタイムリターンを狙いとする居住用住宅投資のみが残ることになります。
そこに「少子化」「住宅ストック数>世帯数」というものが加わると、今現在は40兆円超の住宅産業が半減してしまいます。となると600万円を超える労働者も半減してしまうことになります。
「金利高・生活インフレ資産デフレの20年時代」における住宅産業に転換しなければなりません。「ライフタイムリターン産業」である必要があります。