投稿日:2015年2月10日
最近、マスコミからの問い合わせで「住宅ストック数が世帯数より多くて空き家が増えているのに、なぜ新設住宅着工が100万戸近くもできるのか」というものが複数きています。
回答としては
「1951年以降の住宅着工の累計戸数は7000万戸だが、1979年以前の旧耐震の建物が2600万戸あり、この建物は耐震性だけで無く設備なども現在の新築と比べると劣っています。この建物を当初の買主が売りに出す時に、土地としての価値が無いと買い手はいないため「空き家」となってしまいます。
また新設住宅着工の7割を東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・愛知県・大阪府の大都市圏の6都府県が占めていますが、この6都府県は移動人口の転入超過数の95%をしめるという人口吸収エリアのために良質な住宅ストックが不足しているといえます。
また日本人は「新築信仰」が強いために、新婚や初めての住宅購入の時に新築を選ぶ傾向が強いことも新設住宅着工を押し上げているといえます。
逆に人口転出地域においては空き家が増えることになります。
子供が大都市に働きに出てしまい、お父さんが75歳で死亡して、残った奥さんが85歳で死亡した時に、その家は空き家となってしまいます。現在の空き家の大半がこのパターンです。
そして今後増える空き家のパターンが、団塊世代の住宅です。
団塊世代が大都市に働きに出て住宅を購入しだしたのが、1947年生まれが25歳になった1972年から1949年生まれが40歳になった1989年までで合計2592万戸あります。これらがこれから団塊世代が後期高齢者となる10年後に大量に出てきます。
これらの住宅が旧耐震であり、設備が古いために、現在の新築の耐震基準の強さと設備の良さ並みにするにはリフォーム費用が1000万以上かかってしまいます。立地さえリフォームや解体再建築という選択肢も生まれますが、容積率不足とか接道の問題などが出る場合も多くあります。
そしてその時に子供世帯の団塊ジュニアは40歳を超えていて持家率は60%を超えていますので、いまさら親の家に入る必要は無い人が多いです。
となるとこの2592万戸が活用される率はかなり低くなってしまい、空き家となるケースが増えます。
ただ新設住宅着工がいつまでも100万戸近くできるかと言えばそれは無いといえます。
ポイントは2000年の品質確保法以降の住宅は長期優良住宅などもあり品質は格段に高くなっています。さらに建材・資材の工業化の進展によりバスやキッチンなどは高品質のものが安価に導入できるようになっています。
その2000年以降の高品質の住宅が2015年現在で1570万戸あります。そして2025年には今年から10年間に年間80万戸平均とすると800万戸増えて合計で2300万戸となります。
それに1980年から1999年の着工戸数2793万戸があり、合わせると使用可能な住宅が5093万戸となり全国の世帯数予測5243万とほぼ同じとなります。
この時点で住宅着工に人口をベースとする需要は無くなります。残るのは人口移動要因による地域ギャップのみとなります。
とすると2025年の住宅着工は、大都市圏の6都府県合計の43万戸(2014年実績)のみとなり地方分はほとんど消えるために、2014年実績の89万戸から半分の45万戸前後になると考えられます。
あと押し上げ要因があるとすれば社会ストックや金融資産として着工・蓄積されるということがありますが、現在では住宅の評価は15年でゼロとなってしまうために、それもありません。
2012年3月現在での社会ストックとしての評価は、住宅が339兆円しかありません。(内閣府の国民経済計算より引用)
1951年以降に7000万戸も着工・建築して、総額推計で1000兆円以上の金融投資しながら残っているのは339兆円でわずか1/3しか価値がありません。これでは住宅投資というのは「捨て金」となるので投資対象とならなくなります。
とすると住宅着工は押し上げ要因がなくなるので実需の45万戸前後とならざるをえません。
つまり、住宅ストック数は世帯数を上回るために空き家は増えるので住宅着工は減る。特に優良住宅が世帯数を上回る時に着工数は地域ギャップのみとなる。」
という回答となります。