2014年度の住宅経済全体は49兆円の見込みで、前年度より▼3兆円減る。
投稿日:2014年4月24日
2014年4月現在の年齢別人口をみると、住宅一次取得世代である30歳代は1640万人で前年同月の1696万人から▼56万人も減っています。そのため住宅需要は減らざるを得ません。
この4月時点の人口をもとに簡易的に住宅需要の総額を計算すると54兆円となり、前年度より▼1兆6684億円減る計算結果となりました。そして、その住宅需要の顕在化見込みは49兆円まで減り、これは前年度比で▼6.2%も減り、額にして▼3兆2633億円も減ってしまい、GDPを大きく下げる見込みです。
その簡易計算の内訳をみると
需要が減る原因の一番は、家賃支払いですが、これは家賃の全国平均が下がっているのと賃貸居住高齢者の死去などによる人数減少と若年者の実家住まい率が高くなってきていることなどです。
次に、持家と分譲の減少ですが、これは住宅一次取得人口の減少によるものです。▼56万人も減っているために、これだけで5000億円近くが減ることになります。更に単価の上昇により低所得層が住宅ローン組めなくなるために購入者が減るということと、物価上昇だが収入上昇は微々たるものなために可処分所得が減るので住宅購入意欲が減退するということがあります。
需要が増加するのは唯一「リフォーム」のみです。これは高齢者向けリフォーム市場の増加が大きな要因で、中古マンションのリノベなども増加する見込みです。
ただ、本来であれば中古ストックの増加による中古市場の増加が見込まれるのですが、中古戸建てで耐震性の弱い建物が解体を前提として土地で売買されてしまっているために、中古ストック数が市場として成り立たなくなっているためです。
そして2014年度の顕在化見込みは49兆円と2013年度の52兆円から大きく減ってしまいます。
減少の一番大きな要因は、分譲戸建です。前年度比▼33%も減ってしまいます。基本的には需要の減少があるのですが、主には消費増税駆け込み需要の反動減が大きいです。そこに加えて土地価格の上昇・建築コストの上昇などによる販売価格の上昇で地域の需給ギャップが発生してしまうために、契約が低迷することが見込まれます。そのため住宅着工戸数は2013年度13万戸超えから2014年度は10万戸台まで落ちる見込みです。
同じく持家(注文住宅)も基礎需要の減少と消費増税の反動減が加わって前年比で▼21%もの大きな減少となります。
その中で増えるのが中古住宅です。主に中古マンションの流通量の増加と契約の増加があります。これは新築マンションが契約好調で販売戸数が減っているために中古を買っているということと、価格が上がっていて、売る側が売りやすくなってきているために流通量が増えてきていることがあります。
そしてリフォームも増えることが見込まれます。高齢者リフォームに加えて、太陽光発電なども増えるためです。
そしてこれらの計算結果として、住宅着工戸数は87.5万戸に減ると試算されました。
潜在需要は97.4万戸あるのですが、持家(注文住宅)が潜在需要から▼5万戸と減少するのが大きいです。基礎需要の減少+消費増税の反動減に加えて、土地価格の上昇によるトータル住宅取得コストが増えてしまい、購入できなくなる人が増えるためです。住宅展示場の来場客の半分以上は「土地無し客」と呼ばれる、「土地を買って、そこに注文住宅を建築する」人たちです。
例えば東京都練馬区では従来は土地を坪90万円くらいで買えていたので、30坪で2700万円でそこに注文住宅を2200万円で建てると4900万円になります。それが土地が坪130万円になってしまっていて3900万円まで上がったために合計で6100万円まで上がってしまい、年収の6倍とすると1000万円超の年収が必要となってしまいます。それではお客様の人数は大きく減ってしまいます。これが2014年度に持家の着工が減る要因です。
また分譲マンションは契約好調なのですが、東京都の土地が上がってしまったために住宅用地としての価格の限度額を超えてしまっています。そのために実需向けのマンション着工は減っています。高額マンションであると投資資金であったり、外人が買っているために少し価格が上がっても問題なく売れているので、今後とも着工は継続されます。しかし、実需向けが減ると着工として12万戸を超えることは厳しくなってきます。
そして貸家は金融緩和などにより投資意欲が活発で堅調ですが、建築するエリアが大都市圏に限られてきています。ただ、新築貸家の期待収益率が4%を下回るものも出てきているために、投資資金がドンドン増える状況ではなくなっています。地方では人口減少と工場の海外移転と国内集約化が進んでいて実需は減る一方となっています。そのために37万戸を超えるのは難しい状況です。
このために住宅着工戸数としては90万戸割れは確実で、2013年度からは10万戸以上減ることになります。
これら住宅市場の底上げをどうしたらよいかと言えば、需要顕在化率の低い「分譲戸建」と「持家(注文住宅)」の顕在化率の向上が一番です。そのためには土地有効活用率を上げて土地取得費用を下げることが望ましいです。
例えば、「都市型4階建て」を注文と分譲戸建で実現させるといいでしょう。そのためには構造計算など技術的な問題もありますが、容積率・建蔽率の緩和などができると手っ取り早いでしょう。東京23区を「住宅特区」にして現在の容積率・建蔽率にフラスオンすることができれば、これだけでプラス1万戸くらいできると思います。
また地盤が液状化予想されていて戸建ての人気が離散しているエリアでは、大深度地下の権利が無いのと引き換えに地盤改良費を9割負担補助してあげるというのも面白いと思います。
底上げしなければならないターゲット絞って、その顧客層の嗜好に合わせた対策を講じれば、住宅着工は増やせます。
ただ制度の整備だけとか、建築基準の変更だけなどでは何の効果もないでしょう。住宅は「嗜好商品」から「金融商品」に大きく変質しています。日本国民は東日本大震災により「二重ローン」が発生して、リスクというものを痛感しているのです。そこを理解しないと住宅経済は縮小するばかりです。