投稿日:2013年7月26日
新築一戸建て分譲の価格が上がっていますが、それが高いか安いかは単純な判断はできません。新築の時の価格と中古の場合の価格の成立要因が違うためです。そのために下手すると買った価格より大きく下がってしまうことがあります。
住宅ローンを35年組みますので、35歳で買うと住宅ローンが終わるのが70歳になりますが、ほとんどの場合がその前の子供が成長し家を出て自分が60歳を過ぎていると郊外の新築一戸建ての4LDKでは不便に感じることが多くなり、病院が近くてスーパーが近い駅前のマンションなどを求めることが多くなりました。
すると購入した新築一戸建て分譲を売ることになります。となるとその時の価格が問題となります。
以前は新築一戸建て分譲は土地があるので資産的にはマンションより有利と言われていました。ただこの概念からは「住居としての価値」が欠落しています。
新築一戸建て分譲であれマンションであれ「住むための住居」ですから、そこに住みたいと思う人がいないと、土地の価値は無きに等しくなります。
郊外の新築一戸建て分譲においてバス便であったのが、そのバス路線が廃止されてしまったり、バス停が徒歩10分以上と離れてしまったり、本数が大幅に減らされたりすると、途端にそのエリアへの居住希望者は激減します。
分譲住宅の購入者のほとんどが賃貸住宅にいる人達です。その賃貸住宅はほとんどが駅徒歩10分以内にあります。駅徒歩10分ですと、コンビニがあり、スーパーがあり、飲食店があり、医院があるなど生活利便性は高いといえます。
その人達がいままでは人数が多いのだけれど、駅前の販売が少なかったために郊外の新築一戸建て分譲というものが売れていました。
つまり価格というのは「需要と供給バランス」で決定されます。
買いたい人が多ければ価格は高くなるが、買いたい人がいないと価格は安くなるのです。
事例として、越谷市に1966年に日比谷線が延伸してことにより、大手町まで一本でいける利便性でできた小田急団地というものがあります。
その頃は大手町に一本でいけるというのは大変貴重で、そこに本店を構える銀行の人などがこぞって買いました。駅徒歩25分以上ですが、当初はバス便も多く便利でした。そのために土地は50坪で坪50万以上して、建物と合わせて5000万円という1970年前後では高級住宅地でした。
それが現在では、街ができて40年経ったために人口が減ってきてバス便が減るとともにコンビニも街の中にはなく「さびれた住宅街」となってしまいました。
そのために売り物件は現在で6件あって平均で2200万円くらいですが、成約事例は過去一年でゼロ件です。昨年7月に成約されて以来買う人がいません。ここの路線価の平均が㎡7万円なので坪で23万円くらいなため、50坪とすると1200万円くらいになります。売り物件の平均が土地40万円くらいで計算していますので路線価23万円はが安いといえます。その割安な価格でさえ買い手がいないのです。
そのために新築戸建分譲が3000万くらいで売られているのですがなかなか売れずに500万くらい値引きしてようやく売っているといった状況です。
典型的な郊外型バス便の新築一戸建て分譲なのですが、買い手がいなくなってしまって、価値がなくなってしまったのです。
そのため、ここを離れようとすれば売るに売れないので、新しい住居は全額を手持ち金もしくは2世代住宅ローンなどで賄うしかないのです。それがなかなかできないので、移りたくても移れないで不便をかこっているのです。日々の買い物も徒歩10分以上かかり高齢者にとってはキツイし、私立病院へはバス一本で行けず、一端駅まで出てバスを乗り換えないといけないために1時間近くかかります。自動車で行けば20分くらいでいくのですが、おしいちゃんが死んでしまうともう自動車を運転する人がいなくて、自動車が無い家が多いのです。
このように新築一戸建て分譲の価値というのは、買いたい人が将来的にいるかどうかにかかります。土地と建物の価値だけで価格を決定すると、買いたい人の価格と必ずズレてしまいます。居住価値で判断する基準に変更しないといけないでしょう。
また居住価値のある事例として、さいたま市緑区でJR武蔵野線・東浦和駅徒歩20分があります。新築戸建分譲が2980万前後で販売されていますが、路線価は㎡で10万円平均なので坪単価で33万円ですので30坪で約1000万円となります。建物は市役所評価が1200万円とすると合計で銀行査定としての価格は2200万円となります。人気の無い土地であれば新築が3000万円でも2200万以下で1980万というところが相場となるでしょう。
ところがこのエリアは公立中学のレベルが高くて人気のエリアです。そのために築浅の中古取引価格はというと平均3030万円です。新築価格とさほど変わらないということになります。買いたい人にとってみれば中古でもいいということです。
つまり新築一戸建て分譲の価格というのは中古住宅として売る時の価格を考えないと高いか安いか言えないということです。
同じ新築一戸建て分譲で3000万円で、築浅なら買った価格と同じで売れるものがあれば、片や買ったとたんに1500万に下がってしまうというものすごく大きな差がつきます。
新築の時はデベロッパーから買うために供給価格となってしまっています。ところが中古価格になると需要供給論理により多くは買い手の需要価格となります。