投稿日:2013年7月3日
戸建分譲の契約戸数が好調で、売れています。
首都圏の契約戸数をみると、2月以降は6000戸を超えて平均で6690戸と前年同期比の5190戸の+29%増で大幅増加です。基礎需要は4500戸ですから需要顕在化率は148%となり、これも大きな数字となっています。アベノミクスのお蔭でしょうか。
戸建分譲の首都圏の新規販売戸数と契約戸数の3ケ月移動平均をみてみます。
3ケ月移動平均を使うのは、12月や3月など戸建分譲はピークの尽きがあり、そこで大きく増えるために、それを平準化してみるためです。
そして昨年6月以来の動きをみてみると、新規販売戸数は平成24年6月の4770戸から上昇を続けて11月が6869戸とピークとなりました。
首都圏の基礎需要は4500戸なので昨年6月は近い数字であったのですが、11月には150%を超える過剰販売となっていました。そのために在庫が膨らんでいきました。
これは戸建分譲各企業が前年度よりも販売計画を増やしていることがまずあり、そこにマンションデベロッパーが戸建分譲の回転率の早さに目をつけて販売計画を大きく増やしてきたたことがあります。さらに中小零細工務店が資金が無くて戸建分譲用地を買えなかったのが金融緩和などにより買えるようになり販売をしてきたためです。この3つの動きのために大幅に増えました。
ただ契約がついてくれば供給過剰でも問題はありません。
その契約ですが、昨年の11月までは平均4582戸でほぼ需要通りとなっていました。景気低迷と言われていましたが、戸建分譲需要は年齢別人口と持家率をベースに毎年確実に
発生するために、大きな金融変動が無い限りは動きません。むしろ昨年を通じて長期金利は下げ続けて住宅ローン金利も下げてきて、買いやすい状態にありました。
それが12月に突然契約が大きく増えました。この主要因は9月から11月の3ケ月間で、新規販売は増えたが契約は下がってしまい、そのギャップが6000戸もあり、それが在庫増につながったために、その在庫を処分する必要があったのです。そのために大きく契約を増やしました。ただ幸いにして安倍首相が登場し景気マインドが一気に向上したことが、この大量在庫処分の後押しをしました。
年が明けて1月の契約戸数は6981戸と伸びその後5月まで6000戸を超える大きな相場となっています。
この背景は、一番大きいのが、市場最低金利水準であるがインフレ目標2%を掲げたために確実に長期金利が上がるという先高観によるものです。それに、円安などによる価格の高騰があり、今後住宅価格も確実に上がるという見込みです。そして消費増税の駆け込み需要があります。
この3つの追い風により契約は、平均6690戸と大きな数字となっています。
そして、4月・5月は新規販売戸数と契約戸数が完全一致しています。これは在庫が適正化されて新規販売が契約されているという正常な姿になったということです。ただ、その戸数が6500戸超えというのが問題です。
戸建分譲の需要は年齢別人口の持家率をベースにして人口流入で加減計算しますので、大きく狂うことはありません。経済学で一番信頼できるデータは人口です。ピーター・ドラッガーの名言で「既におこった未来」というものがありますが、その最も代表的なものは人口となります。
そのため首都圏の戸建分譲の基礎需要は4500戸で年間5万4000戸で3年間で16万戸というマクロ的数字はかわりません。たとえ、2013年度が3つの追い風で大きく契約が増えて8万戸になったとしても、3年間では16万戸に収斂します。つまり、需要の先食いです。
つまり、この4月と5月は戸建分譲の新規販売戸数と契約戸数は一致していますので問題はありませんが、此の先に契約戸数が大きく減った時にどうなるのでしょうか。
新規販売意欲は大きく高まっています。戸建分譲の大手6社は前年度より+20%くらい増やそうとしていて、すでに土地取得をしています。マンションデベロッパーも同様で、中小零細に至っては前年度倍増というところも珍しくありません。
特に現在、相続などで土地50坪の中古住宅が売りに出ていて、その建物を解体して土地を分割して2~3棟分譲として売り出す物件が目につきます。
ですので首都圏の戸建分譲の新規販売は現在の6500戸ペースが続くと思われます。
ただ契約は、消費増税の駆け込み需要は10月で終了とります。次に低金利ですが、現在の35年長期固定の2.3%が徐々に上がり、「インフレ目標2%」の期限である平成27年3月までには4%になると考えられます。つまり市場最低金利水準は秋以降には終了し、年末には3%に近付いてつると考えられます。すると現在の主流である年収400万円台の人は、住宅ローン設定額が500万円ほど下がります。さらに価格の上昇ですが、土地は確実に上がっていて、5月は前年同月比で戸建分譲適地では2割は上がっています。それに労賃の上昇による施工費の上昇と、円安撫でによる部資材価格の上昇が始まっています。
このように需要顕在化150%に押し上げた要因がことごとく終了します。そのために秋以降の契約は減少します。
となると、来年の今頃は新規販売戸数が6500戸て契約戸数が4000戸割れで、在庫は月に2500戸づつ増えるという事態が発生しています。
前回の消費増税の時も駆け込み需要が発生し、その後在庫の山となり、清算・倒産・事業縮小企業がものすごい数ありました。今回も同じことになりますが、前回の教訓が生かせるのか疑問が大きいです。
そうなる理由は、戸建分譲企業が需要というものを理解していないことと、「自分だけはは、うまくいく」という思い込みがあるためです。
戸建分譲企業はマクロ住宅経済学を学んでもらいたいものです。ただ、それを教えているところが無いのですけど・・・・。不動産学会って何してるんでしょう ?
住宅は国内内需の柱と言われている割には、理論的にはものすごく未熟で貧弱です