投稿日:2012年4月19日
新築一戸建て分譲とは「土地付き一戸建て分譲」です。
国土交通省の新設住宅着工においては「分譲」の中の「戸建」になります。
一般的には「建売住宅」と言われます。
その数は、平成23年度(平成23年4月から平成24年3月)で言うと、住宅着工の全国で11万8000戸です。
分譲マンションが11万7000戸ですから、マンションよりも多いのですが、分譲マンションよりは地味な扱いです。
それは、分譲マンションの着工の多い業者はテレビコマーシャルなどを行うからです。
「三井不動産」「三菱地所」「野村不動産」など名だたる企業ばかりであることも影響しています。
それに対して、戸建分譲の大手は、テレビコマーシャルをほとんどやりません。
「一建設」「アーネストワン」などが年間着工で7000戸を超えていて、マンション大手よりも多い戸数なのですが、一般の方の知名度は低いと言わざるをえないでしょう。
また「一戸建て」というと、注文住宅を指す場合が多いです。
こちらは「積水ハウス」「大和ハウス」など知名度の高い会社が多いためでもあります。
また、注文住宅は新設住宅着工の「持家」に該当しますが、23年度で30万5000戸と、戸建分譲の3倍近くと数も非常に多いものです。
ただ、戸建分譲というのは、住宅一次取得世代が買う率が高いです。この世代で約8割が購入します。
なぜかと言うと、首都圏に大学入学や就職により引っ越してきて、結婚した後に、新しく住宅を買おうとしている人達にとって、買いやすいからです。
■「買いやすい」ひとつの要因は「値段」です。
戸建分譲はだいたい6棟前後まとまっているものが多いです。
それはもともと農地の単位である「一反」が300坪なので、その土地を売るときに個人で300坪買う人はいないし、
小売店をやるには小さいし、事務所とすると駅から遠いし、マンションとしても小さいし、ということで戸建分譲しかできない場合が多いのです。
その300坪に、一戸建てを建てるとなると道路をいれないといけなので、だいたい3割ぐらいは道路となるので、建物を建てられるのは210坪くらいです
。一つの区割りが30坪とすると7棟となります。
長方形の土地ならば7棟できますが、土地はいろいろありますので、300坪で6棟前後が多くなるのです。
その300坪を売るにあたり、まずは路線価を参考にしますが、買い手側は、6棟の戸建分譲の販売価格からの逆算の値段となります。
例えば埼玉県のさいたま市の京浜東北線の駅徒歩20分とすると、路線価が坪70万円ぐらいであるのが、買いたい値段は、販売価格から建物原価を引いて、その他経費を引いて、粗利を取った残りとなり、坪30万くらいになります。
つまり価格差は、坪40万円×300坪で1億2000万円という相当な価格差があります。
それでも、ほかに買い手がいないために売らなければならない事情があれば売らざるをえません。
つまり、
①個人で土地を買って建物を建てると
土地坪70万円×30坪+注文住宅価格2500万円= 4600万円 であるところが
②戸建分譲企業が買うと
(土地坪30万円×35坪+建物原価1200万+その他経費200万)×粗利20%= 3000万円 となり、
なんと、1600万もの価格差がつくのです。
これでは注文は買わずに、戸建分譲を買うはずです。
さらに戸建分譲はマンションよりも維持費が安くすみます。
一番は駐車場代がいらないということで、次にエレベーター補修点検費用がいらないといことと、管理人の費用とか共有設備の費用がいらないということがあります。
これで、月3万円は支払が変わります。
■「買いやすい」もうひとつの要因は「ひとつの商品」だからです。
戸建分譲は「土地付き一戸建て」と言いましたが、業者が提案するものは「ひとつの商品」です。
ですので、住宅ローンは一回で済みます。そして何人も相手をする必要が無く、一人でよいのです。
また、お客様は住宅一次取得世代が多いので、どのような土地が良いのか、どのように建物が良いのか、とのような設備が良いのか、迷ってしまい、間違った判断をしてしまうことが多いです。
それを戸建分譲はお客様に合ったものを提案しているのです。
例えば、土地ですが、近隣であっても東南の角の2面道路ならば坪100万するのが、北側接道で接道面が数メートルしかなく「ウナギの寝床」のような土地は坪40万となってしまうなど、2倍以上の開きがあったりします。
このような時に人間は、最も良いものを最も安く買おうとします。ところが良い土地はすぐ決まってしまいます。するといつまでたってもかえなくなるのです。
また、建物で頑丈な鉄骨住宅は坪100万して30坪で3000万円しますが、タマホームは1500万円でできるので、これでも2倍の開きがあります。
そして設備にしてもシステムキッチンでYAMAHAなどは100万するものもありますが、ミカドなどは20万円ぐらいのものもあります。
自動車のように、馬力がものすごいスポーツカーか、エコなプリウスか、安くても普通通勤に使うには十分な軽自動車なのかなど判断基準が明快ならばいいのですが、注文住宅は自分にとってどのようなものがいいのか非常にわかりずらいです。
ところが戸建分譲はその価格帯によりそれぞれの格が決まります。
3000万円以下なら、軽自動車のように、普段使うには十分で安くていいもの。
4000万円前後なら、プリウスのように、時代の求める省エネ性などがの機能が揃っているもの。
5000万円以上となると、ベンツのようになにもかもが最高級のもの。
とわかりやすくなっているのです。
そのため、首都圏などでは戸建分譲と注文住宅の着工戸数は同じ数になっています。
デザインなどにこだわりたい人は注文住宅で、普通でいい人は戸建分譲で、土地がなくてもいいから利便性優先の人は分譲マンションになります。
このように戸建分譲は首都圏においては無くてはならないものです。
■さらに戸建分譲はコミュニティを作ります。
戸建分譲の最大の特徴が、その中においてコミュニティが形成しやすいということです。
まずは町内会の自治会なり班を組むことになるので、嫌でもひとつのくくりになります。
分譲地内の道路は「どんつき」といって通り抜けができない場合が多く、こうなると、通り抜けする車が無く、用の無い人が入ることもないので、その中の道路は「コミュニティ広場」となります。
子どもがお父さんとキャッチボールしたり、サッカーしたりして遊び、それを見ているお母さん方は井戸端会議をするという、最近では珍しい貴重な風景となるのです。
これは戸建分譲の建物・道路によるものですが、さらに入居者が近い世代の人が多いということもあります。
ほとんどが28歳から38歳の間ですから、子育て世代として、同じ幼稚園バスだったり、小学校のグループ登校だったりします。
また、購入金額も似たようなものなので、年収も似てきます。ですので、ライフスタイルが似てきますので、連れ添ってユニクロ行ったり、しまむらに行ったりします。
分譲マンションのように、隣の人の顔を見たことがないということはありません。最近話題となっている「都会の孤独死」などはおこりえません。
東日本大震災以降見直された「絆」ができやすいのです。これが戸建分譲の最も良いところです。
江戸時代の農村共同体が無くなった現代日本における共同体として、最も優れたものであると思います。